汚れちまった悲しみに…

一島俊郎、百五歳、いや、63歳だったか。
今朝。ハンバーガーを食いながら、新聞を読んでいるとある事件に出くわした。
聖書が紛失しているのだ。すべての図書館から。
私は泣いた。ここまで人心は腐ったかと。
聖書はどれも本物の聖書。ブラックバイブルはなかった。
聖書の行先はどこだろう。分からない。
私はある喫茶店に入った。喫茶店の名前は小椋久子の店。
「なんなのさ」
「小椋さん、あなたじゃないですか」
「何がだい?」
「聖書を奪った犯人ですよ」
小椋久子はあわてずに言った。
「馬鹿にしてんのかい。そんなことはやってないよ」
「小椋さん、あなたしかありえない」
「でもどうやって」
「こうです」
僕はからくりを打ち明けた。
まず、聖書の場所をすべえ明かす。そして、飲みに来た客を全員洗脳する。そして、取る。
「くだらないね。私はそこまで落ちちゃいないよ」
「あっ!」
バーのカウンターにずらりと聖書があったのだ。
「あるじゃないですか」
「だって、聖書様が…」
「どういうことです
?」
「教えてやるよ」
小椋さんはバーのママ。バーにいつの間にか移動したわけじゃない。喫茶店は編成意識。
バーのままである小椋さんは孤独な生活をしていた。その孤独を癒すのはいつも聖書様だった。
聖書様は優しく微笑んでくれた。ママは感動して泣いていた。
ある日、聖書様はママにこう言った。
「すべての聖書を盗め!」
「なぜ…」
「盗むしかないんだ。守るにはそうするしかない」
ママはいきり立った。そして実行した。
逮捕されるち直前、ママは言った。
「私はやり遂げたよ。もうすぐ聖書は裁断されるとこだったんだ。危なかった。でも、こえからどうする?」
「いい手がありますよ」
私はママにその方法を教えた。なんとすべての聖書を地下室にぶち込むのだ。
「悪いやつだね」
「いや、あなたのお酒には勝てません…」
ママは笑っていた。